最近、吉川英治の「新・平家物語」を読んでいます。

とても長い小説でまだ半分くらいまでしか読んでいないのですが、大変面白いです。

今から5,60年前に書かれた小説なのですが、そうとは思えないほど読みやすく、また、歴史上の人物がまるで見てきたかのように生き生きと描かれていることに驚きました。

それらの秘密を探りたいのと、彼自身に興味が湧いたので彼の半自伝「忘れ残りの記」や随筆、対談集なども読んでみました。



 吉川英治氏はお若い時から色々な職を転々とし、だいぶ苦労なされてきた方のようです。もっとも(すごいことに)本人はそれを苦労とはあまり思っていないのですが。

作家となるまでのそうした経験からか、彼は人気作家となった後でも、普通の人(彼語るところの大衆)の感覚を忘れませんでした。

作家として一段上から大衆を見下ろす事をせず、大工さん、染物屋さん、お百姓さん、それぞれの職業に対して尊敬の念を持ち続けていました。

また彼は歴史上の人物に対しても、様々な文献を読み解くと同時に、自分なりの空想を大いに膨らませ(空想は彼のもっとも得意とするところ)、「吉川英治の歴史小説」を描いています。(そしてそれをもとに、井上雄彦は「井上雄彦の宮本武蔵」を漫画「バガボンド」で描いています)

自分や大衆に寄り添った、時代を超え「何か」が今の自分たちとリンクする、そんな歴史小説を描こうという意欲があります。


それらが、歴史を超え、書かれた時代を超えて、なお愛される彼の作品の秘密なのかなと思います。



 「新・平家物語」は、あと半分くらいです。

平清盛が死に、木曽義仲が活躍しています。

これから平家はどうなるのか、頼朝と義経の関係がどう描かれるのか等々、とても楽しみです。

読み終わったら「宮本武蔵」を読もうか、いや「バガボンド」の連載が終了してからにしようか、悩みます。