「先生、耳の中に蝉がいます(比喩的な意味で)」

 

 ある夏の土曜、目を覚ますとレースのカーテンが揺れています。
珍しく風が部屋の中まで入ってきていました。
今日はクーラーをつけず、家で本でも読もう。
そんなことを寝転びながら考えていると、


 「ミーンミンミンミーーーン」


と蝉の鳴く声が。

 

 何かおかしい。
自分の耳がおかしくなったのかな。
蝉の声が遠くて近い。
音はそんなに大きくないんだけど、どうも近くで鳴いてる気がする。
近くというか、もう耳の中に小さい蝉が住んでいるんじゃないか?と錯覚してしまう。


 自己分析するに耳の位置と蝉の位置、音量、音の反響などといった様々な条件が全て合致するとこのような現象が起こるのだと思います。
たまにこうなります。
他の虫でもなったりします。
鳥ではなりません。
みなさんはどうですか。

 


「夢」
 

 

 TVをつけたまま、音楽がかかったまま寝たりすると夢でその音が聞こえたりします。
寝苦しい夜、蝉の声を聞きながら見た夢。

 

蝉が鳴く。

知らない女がいる。

蝉が鳴き止む。

夢が終わる。

 

蝉が鳴く。さっきと全く同じ調子で。

知らない女がいる。

蝉が鳴き止む。

夢が終わる。

 

これが五回くらい続いて目が覚めました。
夢を見ながら
「これは夢だ」
と分かっていましたが、それでもいい気持ちはしませんでした。
よく覚えているのは、寸分違わぬ調子で蝉が鳴いていたことです。
これがこの夢の恐怖の秘密だと思います。
短い夢なのに永遠に終わらない気がしました。




「セミ爆弾」

 あと蝉で語ることといえば、この時期お馴染みの「セミ爆弾」です。
おそらく羽海野チカさん命名の「セミ爆弾」。
ひと夏しか生きることのできない蝉達が、その悲しみを知ろうとしない人間達に見せる最後の灯火(地面に落ちている蝉が近付くといきなり羽ばたくアレです)。
僕はセミ爆弾が怖くて仕方ありません。
夜コンビニに行くときなど、季節はずれの枯れ葉をセミと間違え一人でビクッとしています。
何が怖いかと問われたら、予告なしの爆発やもし顔にアタックしてきたら・・・など理由は沢山です。
が、なかでも恐ろしいのは
「もし、蝉と俺、お互いパニックになった挙句、俺が奴のことを踏み潰してしまったら。」
という想像です。
雨の日、道路にいる大きいヒキガエルにも同じ恐怖を覚えます。

 でもそんな蝉の声もしばらくしたら聞けなくなるんですね。

 

蝉は泣く、逝く夏を想って

 

って感じです。